2007年01月11日

カスタマーシャシーについて考える

2008年、F1は大きな転機を迎えます。
これまでF1は使用するシャシーを独立したコンストラクタが制作しなければならないとしてきました。
コンコルド協定の中の有名な一説です。
つまり、F1に参戦しようとするものは、F1に参戦している別のコンストラクタが制作したシャシーを流用してはいけませんということです。
ではどうするのか?
すぐに思い付く方法としては自分で作るということです。
これが一番単純ですが、一番難しい方法です。
次に思い付くのは、F1に参戦していないところから買うという方法です。
昔はこの方法でも十分に通用しました。
しかし現代F1ではどうでしょう?
その(参戦していない)コンストラクタの経験や実績にもよりますが、初めて作る自作シャシーよりはましという程度かもしれません。

来年には、この50年あまり脈々と続いてきたF1の伝統が大きく変わります。
それは、カスタマーシャシーの導入です。
F1に参戦しているコンストラクタが開発したシャシーを購入して参戦することができるのです。
もっと簡単に言うと、マクラーレンが作ったシャシーをウィリアムズが使ってもいいということです。
これは言葉にすると簡単ですが、F1に一大変革をもたらす可能性を秘めています。

それはなぜかというと、今までのF1を見てきた方はご存じのように、力はおおむね継続するということです。
参戦チームの総入れ替えでもない限り、コンストラクタ順位が逆転してしまうほどのことは起きませんでした。
つまり、前年強かったチームは今年も強いし次の年もきっと強いはずだということです。
これはF1が歴史の上に成り立っているスポーツであり、経験が大きくものをいう競技だからです。
昔(1980年以前)は、ぽっと出の新参チームがすばらしいパフォーマンスを見せるということもありました。
しかし、その時も前年強かったチームはやはり強かったのです。

この、
「今まで強かったものはこれからも強い」
という伝統は、ある意味F1に安定をもたらしていました。
F1もプロスポーツの1つですから、スポンサーなしには成り立ちません。
多くのスポンサーは、自分の財力と相談して、可能な限り強いチームのスポンサーになろうとします。
当然ですよね。
強いチームほどメディアへの露出が多くなりますから、それだけ宣伝効果が期待できますから。
こうして強いチームは多くのスポンサーを得て、多くの収入を得てきました。
その財力で、
速いドライバーを雇い → 有能なスタッフを集め → 優秀な戦績を収め → また多くのスポンサーを得る
という力強い車輪をまわしてきたのです。

しかし、カスタマーシャシーが解禁になると、きっとこの状況に変化が起きます。
20XX年、コンストラクタ順位が最下位になったZチーム。
次のシーズンにはなんとしても飛躍したい。
そこで、その年のチャンピオンチームであるAチームからシャシーを買うことにしました。
その結果、次のシーズンZチームは大躍進を遂げ、コンストラクタ3位を獲得しました。

なんてことが現実問題として起こりうる状況になるのです。

長い歴史の中で、F1は「ドライバーの時代」、「エンジンの時代」を通り過ぎてきました。
現代F1は「シャシーの時代」です。言い方を変えれば「空力の時代」とも言えます。
確かに、ドライバーの力も必要ですが、それ以上にシャシーの出来・不出来が戦績を大きく左右します。

弱いチームでも強力なシャシーを買うことができたなら、F1の勢力図は一気にシャッフルされることになるでしょう。
さすがに、前年チャンピオンチームが次のシーズンには最下位になるなんてことは起きないと思いますが、最下位だったチームが次のシーズンには3位か4位になるくらいのことは普通になるかもしれません。
弱いチームがいつまでも弱いとは限らなくなります。

そういう状況になったときF1はどうなっていくのでしょう?
もっと言うと、F1を支えているスポンサーはどう動くのでしょう?
いままで、強いチームを安定的に支えてきたスポンサーも、一発逆転をねらって下位チームに鞍替えするかもしれません。
なんといっても、下位チームのスポンサー料は安く済みますから。
その下位チームが優秀なシャシーを購入して大躍進を遂げれば、鞍替えしたスポンサーは最高のコストパフォーマンスを得ることになります。
少ない投資で大きな成果を得ることができるようになれば、F1は一気に混沌とした世界なることでしょう。

もし私の予想が当たるとすれば、この状況はF1チームに安定をもたらすでしょうか?
たぶんそうはならないでしょう。
F1チームに安定をもたらさないものが、F1というスポーツそのものに安定をもたらすでしょうか?
私には非常に疑問です。

私は、カスタマーシャシーの解禁は短期的に見れば面白い試みであると思います。
実際、そういうF1を見てみたいとさえ思っています。
しかし、長期的に見るとこのスポーツにとっていいことなのかは疑問であると言わざるを得ません。
それでは。
posted by onaji_chorui at 13:26| Comment(0) | TrackBack(0) | Weblog | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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